執筆者プロフィール
皆川 泰代
社会学研究科 心理学専攻教授・社会学研究科実習室運営委員長皆川 泰代
社会学研究科 心理学専攻教授・社会学研究科実習室運営委員長
社会学研究科実習室(以下、実習室)は、大学院生の実習施設として設立されました。当初は、三田キャンパス内、現在の南館のある場所の1階に建築された一軒家の建物。これは、臨床心理学研究において、来談者(クライエント)の方と大学生との動線が交差しないよう、プライバシーを確保するための配慮でした。
以来、大学院生の修士論文、博士論文の研究など、教育目的で活発に利用されてきました。設立時から、以下のような研究が、実習室を活用して行われています。社会学専攻が主導してきた、カウンセリング技法・心理アセスメント技法の習得、パーソナリティ研究、実験社会心理学研究。心理学専攻が主導してきた、行動修正実習授業、行動療法技法の習得、神経発達症児支援の実践と研究、乳幼児の行動や脳機能の発達研究。教育学専攻が主導してきた、幼児や成人の知能検査実習、ふたご調査研究、幼児の集団活動研究。
その後、いくつかの移転を経て、2011年に現在の南別館3階に拠点を構えることになりました。現在の実習室は、集団で子どもたちが遊べる「プレイルーム」、個別発達支援に利用しやすい「訓練室」、青年や成人の方たちとの面談、聞き取り調査、基礎実験ができる「面談室1」、「面談室2」からなっています。この他に、近赤外分光法(NIRS)という脳機能計測を行う防音キャビンや研究データの保管のための保管室もあります。
プレイルームと訓練室は、ワンウェイミラーで仕切られていて、両室の様子をモニターするための「観察室」があり、相手から意識されずにデータの収集や母子並行面接などが可能になっています。プレイルームと訓練室を観察室からモニターし、映像をデジタル動画として記録することができます。
また、心理検査、発達検査、言語検査、認知機能検査、運動検査、適応行動検査、ストレス検査など、日本で用いられている検査の多くを所有しており、大学院生の教育と研究に供しています。
大学院生の実習時間を確保するため、実習は授業時間以外にも活発に行われています。例えば、2001年から開始された「臨床発達心理士」(一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構)の資格認定には、修士課程での関連分野の単位取得と同時に200時間の実習経験が要件となっています。実習室での発達支援の実習授業は、資格取得のために不可欠なものです。これまでに大学院生や研究員が、実習室で実習経験を積み、「臨床発達心理士」の資格を取得し、研究職として、あるいは専門職として発達臨床現場で活躍しています。現在も、多くの大学院生が取得準備を進めています。
研究に目を向けると、双生児を対象にした観察・調査研究が進められています。また、乳幼児の神経科学的研究を進める大学院生も増えてきています。実習室に設置されているNIRS、視線追跡装置、生理計測装置などを用いた実験研究も活発に行われています。また、工学研究グループと共同で、モーションキャプチャーによる運動、社会的相互作用解析もスタートしました。
今後も社会学研究科実習室では、文理融合型の学問の独創性を活かしつつ、大学院生が将来の研究、実践現場で活躍するための教育基盤をさらに充実させていきます。