執筆者プロフィール
藤野 陽平
社会学研究科 社会学専攻 教授藤野 陽平
社会学研究科 社会学専攻 教授
台湾を中心としながら東アジア各地で人類学調査を続けてきました。台湾は東アジアにおける民主主義の代表の地位を確立していますが、それは新しいものではなく、戦後、ながらく独裁政権下で市民の自由は制限されてきました。
歴史を振り返ると原住民と呼ばれる先住民族が暮らしていた台湾に徐々に漢民族が移住し、その後も大航海時代にはオランダとスペインが、アヘン戦争の後にはイギリス、日清戦争の後に日本、戦後は中華民国といったように、新しい支配者が次々とやってきました。そのため、複数の植民経験がミルフィーユのように重なりあって、いろいろな出自の人々が持ち込んださまざまな文化が台湾を多様性のある色鮮やかな社会にする一方で、その度ごとに熾烈な勢力争いもありました。
帝国日本による植民地統治、戦後の228事件や国家暴力、1970年代からの民主化運動を経て、2014年のひまわり学生運動と歴史的な大きな出来事も起き、これらは歴史学や政治学、国際関係学のジャンルで積極的に研究されてきました。
そして、そこには必ず人々の祈りがありましたが、これまであまり注目されてきませんでした。私はこうした祈りの場に身をおきながら、人類学的に捉えなおしています。人類学はエスノグラフィという長期間現地で暮らし、そこで出会った人々と一緒に考えてみるという方法を用います。祈る人々の息づかいを感じながら同じ場所に寄り添うことで見える世界からこれまでとは違った東アジアの姿を描いていきます。