慶應義塾

知らないことを知る喜びを追いかける

公開日:2026.06.01

スペイン生まれのマルタ専任講師は、「なんで?」という問いをくり返すのが好きな研究者です。子どものころは動物が好きで獣医を夢見ていました。それが、やがて「病気のしくみを知りたい」と遺伝学の世界へのめり込み、 今は、からだの中の細胞どうしが「会話する」しくみを探っています。

登場者プロフィール

  • プリエト・ビラ,マルタ

    薬学部 創薬研究センター ナノ医薬・分野横断遺伝学講座 専任講師

    (2025年12月現在)

    プリエト・ビラ,マルタ

    薬学部 創薬研究センター ナノ医薬・分野横断遺伝学講座 専任講師

    (2025年12月現在)

ナノの世界で細胞の声をきく

顕微鏡の進化で、ナノメートル―1mmの100万分の1という極めて小さい細胞の世界をのぞけるようになりました。

細胞どうしが「会話」のように物質をやり取りする様子が見えてきたのです。細胞から放出される「エクソソーム」という粒子は、かつては細胞の「ごみ箱」だと考えられていましたが、内部に遺伝情報やタンパク質を含み、別の細胞に届ける「メッセンジャー」として機能することがわかってきました。これにより、損傷した細胞の修復や免疫応答の調整にも関わっているとされています。マルタ講師は、心筋のエクソソームに含まれる遺伝情報が炎症や線維化を抑える働きをもつことを発見。健康な心筋のエクソソームを活用し、心筋梗塞による線維化を防ぐ手段を見出しました。「なんとも思われていなかったものが重要になってくるところがおもしろい」。現在、これを治療につなげる研究に挑戦しています。

撮影:慶應義塾大学薬学部

一歩踏み出すことで広がる世界

「体内のバクテリアや食べもの由来の遺伝子が、人の細胞とどんな『対話』をしているのかにも興味があります。なぜ?を問い続けていくのはワクワクします。」そんなマルタ講師は、漫才に出ようと誘われ、「それも新しい経験」と挑戦したこともあります。どんなことにも臆せず踏み出す姿勢は、研究への取り組み方にも通じます。

神経疾患等の病気について調べ出したのは、大学時代に観た映画『命の詩』や日本のドラマ『1リットルの涙』がきっかけでした。「調べていくうちに、わからなかったことが理解できるようになるのが嬉しくて」。 その感覚こそが、気づけばマルタ講師を薬につながるナノ医療の研究の世界へ導いていきました。
「研究は失敗の連続。うまくいかない理由を探してもう一度試し、たまに思った通りにデータが出ると喜びが失敗の苦労すべてを上回ります」。そのまなざしの先には、まだ誰も知らない世界が広がっています。

撮影:慶應義塾大学薬学部

Q.あなたにとって薬学とは?

A.「なんで?」を解きながら、命のふしぎにわくわくすること。