今月のサイエンス - 2026年03月
1: 開胸手術に劣らない生存期間が示され 低侵襲手術の有効性を世界で初めて報告
Lancet Gastroenterology & Hepatology.
Takeuchi H, Machida R, Ando M, Tsubosa Y, Kikuchi H, Kawakubo H, Noma K, Ueno M, Tsushima T, Bamba T, Fujita T, Hamai Y, Kakishita T, Daiko H, Koyanagi K, Matsuda S, Kato K, Sasaki K, Kita R, Kitagawa Y.
切除可能食道扁平上皮癌の標準治療は食道切除術であるが、手術侵襲が大きいことを踏まえ、その軽減を目的として胸腔鏡手術が開発された。それまでの開胸食道切除術と比較して整容性に優れ、肺炎などの呼吸器合併症発生率を低減することは広く示されてきたが、全生存期間を含めた長期成績に関しては未解決課題であった。JCOG1409は、開胸手術に対する胸腔鏡手術の全生存期間における非劣性(劣らないこと)を検証することを目的とした多施設共同ランダム化第III相試験である。各群150名が登録された。主たる解析の結果、胸腔鏡手術の開胸手術に対する全生存期間における非劣性が示され新たな標準治療となった。さらに本試験において規定されたリンパ節郭清範囲は2群間で同一であるにも関わらず、胸腔鏡手術において全生存期間が良好な傾向が示された。これは、胸腔鏡手術による拡大視を伴う精緻な手術と手術侵襲の軽減が、長期にわたる生存期間の改善につながる可能性を示唆している。食道癌に対する食道切除術においては、2018年よりロボット支援手術が本邦において保険適用となり、急速に普及している。手術侵襲のさらなる低減が、食道癌治療アウトカムの改善につながることが期待される。
(外科学(一般・消化器)北川雄光、川久保博文、浜松医科大学外科学第二講座 竹内裕也)
2: がん遺伝子パネル検査の 実臨床における有用性を解明
Nature Medicine.
Saito Y, Horie S, Kogure Y, Mizuno K, Ito Y, Mizukami Y, Kim H, Tamura Z, Koya J, Funakoshi T, Hirata K, Kataoka K.
近年がん領域では、遺伝子異常を標的とする治療(標的治療)の開発・承認が進んでいます。これらの治療標的となる遺伝子異常を網羅的に検出するため、臨床現場では「がん遺伝子パネル検査」が用いられるようになり、本邦では2019年から主に標準治療が終了した再発・難治固形がん患者を対象に保険収載されています。私たちは、この保険診療の一環としてがん遺伝子パネル検査を実施された5万例以上の臨床ゲノムデータを用いて、標的治療の実態や効果、患者予後などを解析しました。その結果、国内承認薬だけでなく、国内未承認でも有効性が示されている薬剤の標的となる遺伝子異常が検出された場合に、患者予後が改善することを明らかにしました(図:エビデンスレベルA・B)。また、がん遺伝子パネル検査に基づく標的治療導入率は全体では8%にとどまっていましたが、経時的に増加傾向にあることが分かりました。この標的治療導入率はがん種間で大きな差があり、甲状腺がんや肺がんでは高い一方、膵がんや肝臓がんでは低いことが明らかになりました。さらに、TMB-Highなどの臓器横断的バイオマーカーの有用性についても、がん種や閾値設定による違いがあることも分かりました。本研究は、がん遺伝子パネル検査の実臨床における有用性を明らかにしたものであり、がんゲノム医療の最適化に重要な知見を提供するものです。
(国立がん研究センター/内科学(消化器) 斎藤優樹)
その他の掲載論文
1: Evaluation of drug-induced lymphocyte stimulation test in mesalazine-associated allergic drug reaction.
J Allergy Clin Immunol Glob.
2025 Dec 17;5(2):100625. doi: 10.1016/j.jacig.2025.100625. eCollection 2026 Mar. PMID: 41561978
Fukasawa N, Kiyohara H, Adachi T, Sugimoto S, Yoshimatsu Y, Murakami S, Mizushima I, Kaieda Y, Takabayashi K, Tsunoda J, Nakamoto N, Fukunaga K, Taguri M, Mikami Y, Kanai T.
2: Nationwide Trends in Coronary Revascularization in Japan, 2017 to 2023: From Decline to Plateau.
Journal of the American College of Cardiology.
2025 December 9; 86(23): 2391-2394. doi: 10.1016/j.jacc.2025.09.1594
Shun Kohsaka, Hiraku Kumamaru, Mitsuaki Sawano, Makoto Mori, Kyohei Yamaji, Aya Saito, Tetsuya Amano, Ken Kozuma, Noboru Motomura